SDGs/ソーシャルグッドなコミュニティスペース「ウィズスクエア福岡」もテーマに掲げている「持続可能な開発目標」SDGs。この記事では、コロナウィルスがSDGsにどのような影響を与えたのか、まとめていきます。
持続可能な開発目標SDGsエス・ディー・ジーズとは
SDGsは2020年から盛んに企業活動やメディアでも取り上げられることが増えてきました。
そもそもSDGsって何だろう?
という方は、過去の記事をチェックしてみてくださいね。
SDGsへのコロナパンデミックの影響とは?
SDGsの目標とする2030年まで10年をきっています。その最中、世界的な大流行をみせているコロナウィルスは、SDGsの達成にどのような影響を与えたのでしょうか。
全世界に吹く大きな逆風
UNDP(国連開発計画)の発表によると、1990年に計測を開始してから初めて「人間開発指数」が減少に転ずると言われています。「人間開発指数」とは、世界の教育、健康、生活水準を総合した尺度です。1990年以降、金融危機など世界的な危機の中でも上昇を続けてきたこの尺度が、減少に転じることは大きなインパクトを伴っています。人間開発指数の減少はSDGsの停滞とイコールではありませんが、SDGsの達成にも大きな影響がでています。
特に教育と健康という側面では、環境の充実していない国ほど、大きな影響を受けています。ほとんどの開発途上国がコロナウィルスの悪影響を受けており、ここではその事例を簡単にご紹介いたします。
「3.すべての人に健康と福祉を」への影響
開発途上国におけるHIV/AIDSの流行の制御、マラリアによる死亡数の半減など、健康に向ける取り組みは近年目覚ましい成果が見られているもの、コロナウィルス流行以前から目標達成には遅れたが出ていると言われていました。コロナウィルスによる健康被害はもちろんですが、医療機関の圧迫や予防接種の滞りという連鎖反応が起こり、目標達成は更に遠のいています。
また、ステイホームの定着による二次的な影響を取りざたされています。家庭環境の良い家庭であれば家族の結びつきが改善されるなどの好影響もありますが、問題がある家庭ではドメスティック・バイオレンスや児童虐待のリスクも高まったり、単身世帯では孤立化により心身への悪影響も見られます。
「1.貧困をなくそう」への影響
経済活動停滞を伴ったコロナウィルス対策は、貧困層への影響も甚大です。国際的なNGOのオックスファムの予測による、コロナウィルスの影響により5億人の人々が貧困に陥ると試算されています。
また、日本でも「貧困」の問題が、これまで以上にフォーカスされることとなりました。対面での経済活動が制限されたため、非対面化に対応できる仕事や人との間に大きな格差が生まれました。日本でも8万人が失業したと言われ(これはハローワークの調査なので、倒産や廃業を含めると実数は更に増えます)、兼ねてより問題になっていた相対的貧困者の数が増えています。
※相対的貧困とは、その国や地域の水準の中で比較して、大多数よりも貧しい状態のことを指しています。
「4. 質の高い教育をみんなに」への影響
ユネスコによると、ロックダウンの影響により世界では約12億5,000万人の子供が教育の機会を奪われているとの調査結果がでています。また、UNDPの推定によると、開発途上国の86%の小学生が一時的にも教育を受けられない状態にあるとされています。
日本でも最初の緊急事態宣言が発令された際は、各自治体に応じて休校となりました。また、デジタル化に対応が進んでいる自治体ではオンライン授業のための環境が整いましたが、対応が遅れている自治体では2021年の1月現在でもオンライン環境は整っていません。
開発途上国でもインターネットへのアクセスできるかという「情報格差 (デジタル・ディバイド)」が大きな問題となっています。
コロナウィルスの悪影響を総じて言うなれば、経済活動の停滞や生活環境の変化により、格差がこれまで以上に浮き彫りになったと言えるでしょう。
コロナパンデミックにより見えた可能性と新たな課題
反面、コロナウィルスによって進展が見えた事項もあります。これまで二の足を踏んでいた事が、有無を言わさず変化せざるを得ない状況になった副産物です。
デジタル化、レス化の産声
皆さんがまず思い浮かべるのは、デジタル・テクノロジーの活用やITインフラの整備ではないでしょうか。教育はもちろん、仕事の面でもテレワークや非対面営業の普及が進み、ワークライフバランスの充実への好影響もありました。キャッシュレスやハンコレスと言ったこれまでの生活習慣の見直しにも大きく寄与しています。
ただし、教育への悪影響の項目でも触れましたが、「情報格差 (デジタル・ディバイド)」も今後社会課題となっていくでしょう。テクノロジーの進歩は、同時に社会課題表出と表裏一体と言えます。
転換した地球環境
全世界的にロックダウンが行われた2020年4月以降、地球環境にとっては良いニュースが聞かれました。オゾン層の回復、空気の改善も多く報告され、インドのデリーでは久しぶりにヒマラヤ山脈が見えたというニュースもありました。
人間の自然資源に対する需要と環境への圧力を示す「エコロジカル・フットプリント」というデータ指標では、9.3%の減少が見られたと言われています。
反面、これまで企業が取り組んでいたプラスチックゴミの問題は、感染防止需要の高まりでトーンダウンするなど、生活環境の変化へ対応していくことが求められています。
社会課題のグローバリズムと自分事化
コロナウィルスによってもたらされた何より大きな気づきは、「全ての国、課題はつながっていて、それぞれ単独では解決することはできない」ではないでしょうか。これまでの課題や事件は自分に直接影響がなければ、対岸の火事と感じることもあったでしょう。しかし、全世界が同様の問題を抱え、それによって連鎖的に広がる影響を目にすることで、世界はすでに自分自身とつながっていることを実感せざるを得ない状況があったのではないでしょうか。
多くの人がこの気づきを持って社会に関わっていくことは、未来を変えていく一助になっていくと考えられます。
専門家の意見とは
元・国連広報官(SDGs担当)で、現在はSDGsにビジネスで取り組む企業を支援する青柳 仁士さんは、
最も重要な変化は、地球規模の課題に対する共感が一気に広がったことです。
もっと感染力が高く致死率の高いウイルスであれば、人類は絶滅の危機に瀕していたかもしれません。コロナ禍を無事に抜けたとしても、そうしたリスクはこれからも存在し続けます。地球や人類といった大げさなことではなく、自分自身の生活を持続可能にするために、普段から社会課題に取り組むことが重要であると感じた人は少なくないのではないでしょうか。そうした共感の広がりは各国の政治や世界経済全体にも反映されてきており、国・企業・人々などの考え方と行動に様々な変化をもたらしています。
https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000518206.html
と語られています。SDGsの直接的な取り組みは国や行政、企業が占める割合が大きいのは事実です。しかし、一人一人の行動がそれぞれに大きな影響を与えていくことは間違いありません。
青柳さんのインタビュー記事は示唆が多いので、引用元からぜひ全文をご覧ください。
まとめ
SDGs策定にも関わり、ノーベル平和賞を受賞しているバングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス博士は、「No Going Back 」というメッセージを発せられています。これは、社会課題の息詰まる元の世界に戻るのではなく、新たな世界を創っていこうというメッセージです。
多くの価値観が変容した今こそ、より良い社会を創るには大きな機会といえるかもしれません。
今回、ご紹介した青柳さんは2月20日に開催するイベントにて、「SDGs×ビジネス」というテーマで登壇をいただきます。これからの社会とビジネスを考える良い機会となりますので、ぜひご参加ください。
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